voice

ブラジルの防犯システムとDXの進化

                                             

2019年のデータでは、ブラジル全土の犯罪発生率は日本の128倍。人口、及び、経済の規模において南米最大の都市であるサンパウロの治安は依然として回復の兆しを見せていない。以前は強盗事件の数こそ多かったものの、抵抗さえしなければ命まで奪われることはなかったが、最近は区悪犯罪が増加しており、市民の間の防犯への意識も変化している。サンパウロ州公安局の情報によると、2020年における殺人事件数は2893件と、2019年の2778に比較すると4.1%増加した。

 

犯罪の増加により警察力が追いつかないケースが多く、自己防衛の意識を持つ国民も多い。大都市ではオフィスビルやマンションはもちろん、多くの家庭の玄関や駐車場にも防犯カメラを設置するようになった。また雇用者用の指紋認証ドアロックシステムを採用する企業も出始めている。

 

政府、及び、警察はテクノロジーを活用した防犯に重きを置き、AIや画像解析を通じたセキュリティーが多く導入され始めている。2019年のリオのカーニバルで犯罪対策として顔認証システムが試験導入され、合計4人の指名手配犯の逮捕に成功している。顔認証システムを通じて不法入国者を検知するシステムは、既にブラジルの14以上の主要国際空港に導入されており、首都の人通りの多い場所やイベントなどにも導入が検討されている。

 

このように防犯対策のDX化に伴い、ブラジルの治安改善に対する日本企業の関心も高まっている。セキュリティー分野で最先端の技術を誇る株式会社アロバやElsys Japan株式会社がブラジルへの進出を検討している。特にElsys Japan株式会社は、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業の案件化調査に採択され、2021年5月よりブラジル現地にて調査を実施する予定だ。Elsys Japan株式会社が開発した画像解析システム「Defender-X」は、監視カメラなどで撮影した人物の精神状態を、振動を通じて可視化し、不審者を事前に検知する。特殊なハードウェアを必要とせず、汎用の監視カメラとパソコン、ソフトウェアで解析が可能だ。既に世界19カ国で稼働しており、非常に高い評価を得ている。

 

ブラジルの治安をめぐる課題は様々であり、テクノロジーのみで対応することは難しいが、AIやIoTを絡めたDX化は、今後、必要不可欠なツールであることは間違いない。

 

日本の高いセキュリティー技術が、ブラジルの治安改善や生活安全の向上に貢献することは、近い将来起こりうることで、日本企業のブラジルへの進出のカテゴリーとして確立されることを願う。