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ブラジルにおけるデリバリーサービス

 

デリバリーサービスは様々な業界で「差別化されたサービス」から「ニーズ」へと一変した。昨年のパンデミック到来によりデリバリーサービスは必要不可欠なものとなり、アプリ利用者による注文頻度の増加や新規ユーザーの加入に伴い消費量が増加し、国民の習慣に影響を与えた。

 

2020年にラテンアメリカにおけるデリバリー市場では、やはりブラジルが頭一つ抜けている。同国はラテンアメリカ市場全体の48.77%を占めており、メキシコとアルゼンチンが続いて27.07%と11.85%を記録している。また2021年も更なる増加が予想されている。2021年の年末までにラテンアメリカ市場は世界で約6.3兆ドルを生み出す見通しとなっている。

ブラジルは2020年3月6日時点でデリバリーサービスアプリ(フードデリバリーを含む)のダウンロード数が2019年3月比で120%増加しており、2017年にスマートフォンユーザーの47%がフードデリバリーアプリを利用していると回答していたのに対し、2020年には72%と飛躍的に増加した。また「レストランから消費者」へのデリバリー利用者は2024年までに3900万人に達する見通しだ。

自粛生活を強いられたブラジル人の消費習慣が変わり、今後も新たなトレンドが現れることだろう。Statista(統計データベース)によれば、以下の項目の増加が見られた。

 

・食料品店の新規消費者が96%増

・オンライン消費者全体が12%増

・基礎食材の販売が165%増

 

また別の調査では、パンデミックを生き延びる策として商店の47%が新たな販路を開拓し、その中で電話を活用した販売を開始した商店が71%、WhatsApp(メッセージアプリ)を活用した販売が63%、自社ECサイトを構築した商店が51%、ECモールへ出店をした商店が42%、そしてデリバリーアプリを活用した商店が39%となっている。

 

現在、ブラジルにはオンラインデリバリー市場を牽引する大手企業が4社存在する。iFood、Uber Eats、Rappi、Delivery Muchの4社で、iFood、Uber Eats、Rappiが各州の首都や大都市をマーケットにする一方で、Delivery Muchはオンラインデリバリー市場のわずか6.9%を占める内陸部に焦点を当てている。

パンデミックによりレストランやバーの営業が大きく制限された。店内営業が出来ないクリティカルな事態を脱する為に、iFoodやUber Eats等のアプリを通じた販売と配達を余儀なくされた。しかし、多くのレストランは売上の30%にも達するiFoodやUber Eatsの手数料に対し大きな不満を抱えている。加えてマーケットシェアの70%を占めるiFoodに対し、アプリ内で値引きクーポンを提供しているレストランを優先的に扱うことに対する不信感もある。

 

打開策はあるのか?

状況を打開する為の選択肢として、レストランが自社独自のアプリをリリースし、30%にも上る手数料の負担を避け、独自の割引やプロモーションを提供することが挙げられる。その一方で、iFoodなどの大手と競争するには、優れたマーケティング戦略と配達員の手配が必要となる。

2つ目の選択肢は、Abrasel(ブラジル レストラン・バー協会)がIT企業やアプリケーション企業、金融機関と提携して開発を進めている「Open Delivery」というサービスである。このサービスはレストランやバーが複数のプラットフォーム (iFood、Rappi、Uber Eats等) へ登録をせずとも、Open Deliveryにさえ登録すれば、大手や新規参入の様々なプラットフォームを同時に利用できるというものである。このサービスの利点は、iFoodなどの大手ユニコーンに市場を独占させない効果と、同時に新規参入のスタートアップ企業を競争に参加させること、加えてレストランやバーが彼らにとってサービスの良いプラットフォームを自由に選択できるという点である。AbraselのSalles氏は、2021年上半期に同システムをテストフェーズに移行させるとコメントしている。

 

デリバリー市場におけるトレンドは、現代社会の消費の効率化を図るテクノロジーの向上にある。この先、数年間の同市場の発展に注目したい。